長期化する戦争

  2022年の2月24日に、ロシアがウクライナでの軍事作戦を開始し、世界に衝撃が走りました。プーチンがほんとうに戦争をしかけると思っていた人は多くありませんでした。

 当時のことを簡単に整理すると、プーチン大統領を悩ませてきたことがNATOの拡大です。1991年にソ連が崩壊し、社会主義国側の軍事機構であるワルシャワ条約機構は解散しました。資本主義国側の軍事機構であったNATOも解散する話があったのですが、国際連合が十分機能しない中、存続を求める声が高く、機能し続けました。でも、当時は「加盟国は拡大しない」方針だったという説があります。(少なくとも、プーチンは、ベーカー国務長官とそう約束したと思っていました。)でも、その後加盟国は拡大し、旧社会主義国も多数加盟し、最初12か国だった加盟国が2020年には30か国に膨れ上がっていました。

 勢力巻き返しをはかったプーチンは、2014年にウクライナのクリミア半島を攻撃し、武力で併合しました。その後もドネツク州とルガンスク州による戦争に介入したり、領土と影響力を拡大させる野心マンマンでした。

 2019年にウクライナ大統領に就任したゼレンスキーは、ウクライナもNATOに加盟したいという意思を表明しました。ロシアが怖すぎるウクライナとしては当然だったかもしれません。このことは、ウクライナがロシアの忠実な子分であることを期待しているプーチンをひどく怒らせました。また、「NATOがロシアを攻めてくるのではないか」という恐怖心にもかられていたようです。

 ここで気になるのが、NATOのストルテンベルグ事務総長の対応です。「加盟国を受け入れるかどうかは、NATOと加盟国との関係であり、ロシアは口を出すべきでない」と正論で対応したのです。でも、このとき事務総長が「ウクライナをNATOに加盟させない」と言えば、プーチンはウクライナを攻撃しなかったでしょう。そして、NATOはこのときウクライナを受け入れる気はなかったと推測できます。というのは、ウクライナには親ロシアの勢力も根強く、いつなんどき親ロシア政権が誕生するかわからない状況でした。もしNATOに加盟した後に親ロシアの政権が誕生したら、NATOの軍事秘密などがウクライナ経由でロシアに把握されてしまいます。バイデン大統領の「もしロシアがウクライナを攻撃してもアメリカ軍を派遣することはない」と言う発言も「戦争をそそのかしている」と話題になりましたが、NATOの対応とセットのように見えます。

 誰かがプーチンをけしかけている、というと陰謀論みたいになってしまいますが、アメリカとNATOの目的は何なのでしょうか。ロシアを疲弊させること?ロシアを敗北させて中国の台湾攻撃を諦めさせること?

 国際社会がこんな様子である以上、この戦争を終わらせる最も理想的な方法は、ロシアの民意が戦争に強く反対することといえます。具体的には、来年の大統領選挙でプーチンを落選させることです。でも、独裁国家の選挙は日本とは異なりフェアであるとは限りません。また、ロシアは危機に備えた政府系ファンドを持ち、西洋諸国の経済制裁に対処して国民の生活はある程度維持させていて、そのうえで嘘の情報(「ウクライナでロシア系住民が虐待されているから派兵している」など)で国民を洗脳しています。

 ただ、政府系ファンドは規模的に今年度くらいで枯渇するのではないかと見込まれています。後は、本当の情報をロシア国民に伝えることができれば、ロシア国民が戦争を終わらせようという動きを活発化させると思います。何とか多くのロシア国民に真実を伝えたいです。