残業は減らせるのか?

 改正労働基準法が施行されました。この法改正は、電通の若い女性社員の過労自殺事件などを受けて、安倍内閣が進めている「働き方改革」の根幹となります。

 改正労働基準法の最大のポイントは、残業規制です。労働基準法の法定労働時間は1日8時間、週40時間ですが、同法第36条に基づくいわゆる「三六協定」を使用者と労働組合(または労働者の過半数を代表する者)が結べば、時間外労働つまり残業が可能です。

 これまでは、特別条項付き三六協定を結んだ場合は上限なく無限に残業をすることが可能でした。そのためおそろしい長時間労働が起こり、過労死などを招いていたといえます。

 改正後は、三六協定を結んでも、一か月100時間、年720時間までしか残業かできません。また、2~6か月の複数月の平均が80時間以内という規制も導入されています。これで残業は減るのでしょうか?

 私の職場でも、2019年度は2018年度よりも勤務時間が減らされているようです。働き方改革の影響が、当然ながら学校にももたらされたわけです。ただ、仕事が減りそうな気はしません。

 というのは、「勤務時間」は減っても「仕事」は整理されていないからです。日本のほとんどの職場は、今こういう状態なのではないでしょうか。

 「残業」と「職場に残っていること」は別です。例えば、仕事が終わってからも職場に残って電車やバスの時間を待っている時間などは、残業とはいいません。そして実際は仕事をしているのに「職場に残っているだけ」とみなすサービス残業は日本の職場特有の現象です。

 各職場の管理職の人々が心から社員の健康を望み、社員も人任せにせず生産性の向上と労働時間の短縮を目指す気持ちを持たなければ、ただサービス残業が増えるだけだと思います。

 そして、つくづく思うのが、どこの職場にも「真面目に働く人」と「働かない人」がいます。「働かない人」は正規の労働時間が終われば山のように仕事が残っていてもさっさと帰ります。そして、労働時間が削減されれば「働かない人」の帰る時間が早くなり、「真面目に働く人」のサービス残業はさらにその分増えるというわけです。

 皆がさっさと帰っていては職場が機能しないのが現実だからです。労働基準局の人は、よく職場に来て残業の短縮を命じます。でも、仕事はあるわけですから、残業の多い職場を見つけたら残業時間に応じて業務整理の報告書を提出させるか追加の労働者を雇うかを命じなければ、残業を隠す工夫がうまくなるだけです。

 私事ですが、今年は新テストの実施に伴い黄色本を書き換えますので、勤務を非常勤にしていただきました。私の職場は、清らかな森の中にある学校で、長時間労働の帰りも、校舎を出た瞬間の森林浴で疲れがとれる環境です。だからといって、日本の職場で、フルタイムで働いて職場以外のことにエネルギーを費やせる環境はほとんどありません。

 「働き方改革」、もっと前進させてほしいなあと思います。