領土問題

 海洋資源への関心が高まる一方、近年の日米同盟の揺らぎもあり、日本の領土問題が話題になる事件が増えていますね。外国の大統領が日本の領土と主張している地域に乗り込んだり、市民運動家が日本が実効支配している土地に勝手に上陸したり、「日本はなめられすぎ」と思っている人も多いと思います。ただ、これらの領土問題は、一括して論じることのできない個別の問題をそれぞれ持っています。今日は尖閣諸島、北方領土、竹島についてそれぞれが持っている問題についてカンタンに説明します(法的、政治的説明を中心に行います。)

 まず、尖閣諸島ですが、これは間違いなく日本の領土です。明治時代に日本が発見し、無主地(どの国も所有していない土地)であることを確認して日本の領土であることを宣言しました。この時異論を唱える国はありませんでした。カツオブシ工場が建っていた時代もあり、日本人が住んでいました。所有者は最初古賀家で、後に現在の所有者栗原氏に売却され、栗原氏は毎年尖閣諸島の固定資産税を払っています。沖縄がアメリカの統治下に在った時代は尖閣諸島もアメリカの統治下にあり、沖縄が日本に返還された時に尖閣諸島も一緒に返還されています。中国、台湾が領有権を主張しだしたのは、この海域に資源が眠っているという調査が発表されてからです。

 次に北方領土ですが、戦前この地には多くの日本人が住んでいました。でも敗戦によって日本はサンフランシスコ平和条約で「千島列島を放棄する」ことを誓いました。この時全権代表だった吉田茂首相は「択捉、国後、歯舞、色丹の4島は放棄する千島列島に含まない」と言いましたが、明文化されませんでした。そして戦後ソ連、ロシアはこの地を占拠しましたが「日ソ共同宣言」では日本とソ連(ロシア)が平和条約を結んだあかつきにはうち二島(歯舞、色丹)を返還すると言ってます。しかるにメドベージェフ大統領もこの二島には立ち寄っていません。勝戦国ロシアは、「日本は敗戦によって択捉と国後は失ったんだ。自覚せい」と言ってます。う~ん…気持ちは分かるが…とにかくまず日ソ共同宣言で約束された二島はなんとしても返してもらわねば…。 

 最後に竹島(韓国名独島)は、本来無人島です。したがって日本人も韓国人も戦前は住んではいませんでした。明治時代、日本は韓国の外交権を剥奪した上でこの地を島根県に編入しました。そして終戦後ですが、サンフランシスコ平和条約には「日本は朝鮮の独立を認め、済州島、巨文島、欝陵島を含む朝鮮に対するすべての権利、権限、請求権を放棄する」とあります。韓国はここに独島を入れてほしいと頼みましたが、盛り込まれませんでした。そこで日本がGHQの占領下にあった時期に当時の韓国大統領李承晩が「李承晩ライン」を設定して竹島(独島)を自国の領土と一方的に宣言して占拠しました。日本は国際司法裁判所への提訴を呼び掛けましたが韓国は断り、実効支配の歴史を積み上げました。現在は韓国人居住者もおり、この島への観光もさかんです。日本は国際司法裁判所への提訴をその後も一度呼びかけましたが、2005年に島根県が「竹島の日」を設定するまで国民は大きな関心を持っていなかったのが実態です。まあ、日本が経済発展ばかりにうつつをぬかしていた間に韓国に奪回されたというところでしょう。ちなみにこの地に上陸したあの李明博大統領は、尖閣諸島漁船事件の時、「尖閣諸島が竹島の二の舞にならないようがんばれ」と日本にエールを送ってくれました(苦笑)。ぼさっとしているうちにとられてはいけないということです。

 ということで、日本が死守しなくてはならないのは尖閣諸島と北方二島なのです。でも、竹島やその他の北方領土は放棄していいか?というとそうもいかない難しい問題がります。領土問題はつながっているからです。いったん主張した領土をみすみす手放すとなると「領土問題にゆるい国」という印象を中国にも世界にも見せることになり、どんどん領土侵犯が増える恐れがあるのです。いずれにしろ、日本がちゃんとした国であるためには、自国の領土、国民の生命や財産を「誰かが守ってくれるということはないのだから自分でで守る」という意識を育てることが肝要です。