日本の政治はなぜ動かないのか?

 政権交代から3年目。総理大臣は3人目。ところが、沖縄米軍基地の県外移転断念はじめ、「子ども手当」は高所得世帯には支給されない「児童手当」に逆戻り、八ツ場ダム建設中止を取りやめ…と、政治はあまり変わりませんね。

 野田内閣は消費税増税に命をかけていますが、本当は国会議員の削減や公務員削減などの「無駄遣い削減」と同時進行を約束していたはず…。民主党政権は、そして日本の政治はどうしてやるべきことができない、前に進まないのでしょう。アメリカのオバマ大統領などは、医療保険拡充や迅速な景気対策を矢つぎ早に実行したのに! 

 まず、日本の政治がアメリカと異なっている点は、ご存知のとおり行政の長の選ばれ方です。アメリカでは行政を担う大統領が国民の選挙で選ばれるのに対して日本の首相は国会によって選ばれます。やはり、国民の選挙によって選ばれた人が行政権を掌握すると、国民の支持をバックに強い行政は可能になりやすいです。小泉元総理は、日本でも国民が総理大臣を選挙で選ぶこと(首相公選制)を唱えましたが、そうするためには憲法改正が必要です。

 ここで、疑問が発生しそうですね。「イギリス首相も公選制でなく議会の最大政党党首が首相になるのに、日本の首相よりもリーダーシップがある!」と思った人はいませんか。

 日本の政治が動かない大きな理由として、次に「二院制」つまり議会が二つあることにも原因があります。イギリスも貴族院である上院と下院の二院制ですが、実質上は下院の議決だけで法案を通すことができます。ところが、日本では、参議院で議決された法案を衆議院だけで通すには衆議院の出席議員の3分の2の賛成が必要です。与党が3分の2の議席を占めるケースは少なく、実際は大変難しいです。しかも最近の日本では、衆議院の多数派である与党が参議院では多数派を形成できない「ねじれ国会」がしばしば起こっており、議会における意思形成を難しくしています。お隣の韓国では、二院制で政治がこう着したことを反省して一院制に変わりました。日本も一院制になるか、参議院の権限を縮小すればもう少し国会での議決がスムーズになりますが、それも憲法改正が必要です。そして憲法は、「衆参各議員の総議員の3分の2以上の賛成」が必要という厳しい改正手続きが必要で、これまで一文たりとも変えられたことがないのです。

 この他、日本では国会議員が各省庁の官僚を上回る力を持てないことなどをあげることができますが、「議会」というのは大きなポイントですね。そして、議会は国民の選挙で選ばれます。議会が国民の意向に合う総理大臣を選び、参議院と衆議院がほど良い抑制関係を保てたら良いのです。 そう考えると、やはり国民が本当に実力のある国会議員を選出できていないことに帰結することが否定できません。日本の民主主義はまだまだ発展途上なのでしょう。